これだけ知ってりゃ十分!介護保険のすべて

高齢化社会が本格化する時代を迎え介護保険制度は大きな転機を迎えています。近年わが国では介護保険において大きな改正や様々な改革が行われます。現在1,500万人程度の後期高齢者人口が今後2,200万人まで膨れ上がります。全人口の4人に1人は後期高齢者という超高齢化社会になる「2025年問題」にむけて医療、介護、福祉サービスへの需要が高まります。私たちの生活において、介護保険に対する基礎的な知識が欠かせなくなります。そこで介護保険の基礎的な知識から介護保険の改正についてできる限りまとめてみました。介護保険についての理解を進める一助になれば幸いです。

介護保険と介護サービス

保険者と被保険者は誰?

保険制度ではその仕組みを運営する組織を「保険者」といいます。被保険者とは健康保険に加入し、病気やけがの際に必要な給付を受けることができる人の事をいいます。たとえば東京都杉並区の住民の場合、保険事業の運営主体が杉並区なので杉並区が保険者です。
保険者は財源について責任をもって被保険者の資格を管理し保険料を決めます。また保険給付(介護サービスに必要なお金の支給)から「要介護認定」を行います。保険者は「要介護状態」「要支援状態」の認定業務を担う大切な役割があります。被保険者は定める保険料を納付する義務があり住所変更などの手続きを適切に行うことを求められています。こうした手続きを行うことで要介護状態・要介護支援状態になった際に介護サービスを利用することができるのです。

保険料の決め方

65歳以上の第1号保険者の負担する保険料(第1号保険料)が市町村ごとに定められています。保険者の予算の22%が第1号保険料の総額となりそれを第1号保険者の総数で割ることで保険料基準額(年額)が決まります。保険料基準額は前年の所得によって9段階にわかれ被保険者個人に課されます。

 段階  対象  保険料
第1段階
  • 生活保護被保護者
  • 市町村民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者等
  • 年金収入等が年額80万円以下
基準額x0.5
第2段階
  • 市町村民税世帯非課税者
  • 年金収入等が年額80万円以上120万円以下
基準額x0.75
第3段階
  • 市町村民税本人非課税者
  • 年金収入等が年額120万円超
基準額x0.75
第4段階
  • 世帯に市町村民税課税者がいるものの市町村民税本人非課税者
  • 年金収入等が年額80万円以下
基準額x0.9
第5段階
  • 世帯に市町村民税課税者がいるものの市町村民税本人非課税者
  • 年金収入等が年額80万円超
基準額x1.0
第6段階
  • 市町村民税本人非課税者
  • 合計所得額が年額120万円未満
基準額x1.2
第7段階
  • 市町村民税本人非課税者
  • 合計所得額が年額120万円以上190万円未満
基準額x1.3
第8段階
  • 市町村民税本人非課税者
  • 合計所得額が年額190万円以上290万円未満
基準額x1.5
第9段階
  • 市町村民税本人非課税者
  • 合計所得額が年額290万円超
基準額x1.7
介護サービスってなに?

認定結果によって利用できるサービスが分れます。要介護認定は「要介護状態」と「要支援状態」に分かれて認定されます。
「要介護状態」は介護給付となります。

  • 自宅などで暮らしながら利用できる居宅サービス
  • 住み慣れた地域で暮らし続ける小規模多機能型居宅サービス、認知症グループホーム
  • 施設に入居して介護サービスを受ける

「要支援状態」は予防給付となります。
要介護状態に進むことを予防するための給付ですので介護給付とは違い施設サービスが利用できません。サービス提供にあたって本人ができない事のみの支援に留まります。

介護サービスの値段はどうやってきめるの

厚生労働省が社会保険審議会の意見を聴いて介護サービス報酬を定めます。介護報酬とは介護サービスの提供者に支払われる値段のことで1単価10円を基本とした「単価」で決められます。施設・事務所の所在地域やサービスにより割増しされることもあります。この単価の設定には様々な特徴があります。

  • 訪問サービス(サービス内容と時間数によって設定)
  • 通所系サービス(要介護度と時間数によって設定)
  • 短期入所・居住系サービス・介護保険施設(要介護度により1日に設定)
  • 福祉用具(実際に必要な費用を業者ごとに設定)
  • ケアマネジメント(1カ月ごとに設定)

介護報酬は「上限額」のため都道府県等へ届出をすれば事業者が「割引率」を設定し介護報酬よりも安くサービスを提供する事が認められています。

総合事業におけるサービスの報酬は保険者が単価を設定します。実際は国が決めた種類ごとの上限額の範囲内で各保険者が内容、時間、人員などを勘案して報酬を決定します。

介護サービスの利用者はどう負担するの

保険給付を利用した際に利用者は原則費用全体の1割負担ですが2015年8月からは所得が160万円以上の場合は2割負担となります。ケアマネジメント(居宅介護支援・介護予防支援)では全額が保険給付となり利用の負担はありません。施設・通所サービスでの食費等や施設入所時の特別室の費用は全額が保険給付の対象とならず全額利用者負担になります。また地域支援事業の利用者負担については事業ごとに市町村が決定をします。ほとんどの場合、包括的支援事業や任意事業では利用者の負担は必要ありませんが介護予防事業や総合事業では利用者負担が発生する場合があるので各市町村の規定を確認する事が必要です。

介護サービスの費用の支払い方法

介護保険の給付は「償還払い」と「現物給付(法定代理受領)」があります。

償還払いは利用者が費用の全額を事業者に支払い、後日保険者に明細を記した領収書を提出して費用の8~9割を受け取ります。

利用者は事業者・施設に利用者負担の1割もしくは2割だけの費用を支払います。事業者・施設が保険者に請求し費用の支払いをうけます。利用者は負担分だけ事業者・施設に支払えば介護サービスの給付を受け取れる方法が現物給付です。

介護保険の全体像

介護保険のはじまり

日本の高齢化に伴い1995年(平成7年)に議論が始まりました。増え続ける高齢者の介護を家族だけで行う事は限界だろうということで、社会全体で担うしくみが2000年(平成12)に創設されました。これが介護保険です。因みに総人口に占める65歳以上の割合は1995年約15%、2000年約17%、2013年約25%に至っています。1970年から2010年の40年間で65歳以上の割合が3倍以上に増加しています。現在ではすでに4人に1人が65歳以上です。「なにも制度がなかったの?」と思われたかもしれませんが、そんなことはありません。2000年までちゃんと高齢者の介護を支援する制度はありました。ですが医療保険制度(老人保健)と老人福祉制度の二つに分立されていて分かりずらく様々な歪みが生じていました。2000年にできた介護保険はこれらの制度を再編成したものと言えます。現在でも様々な課題が指定記され見直しが繰り返されています。今では超高齢化社会に向けて高齢者介護はもっとも重要な政策として位置づけられています。

増大していく介護給付費

制度創設初年度は全国統計の給付費は3兆6000億円ほどだった費用が10兆円に届こうとしています。介護保険が身近な制度になり市民が利用すればするほど給付費が膨らむのはあたりまえのことなのですが、10年ほどで2倍以上に膨れ上がりました。日本の防衛費は5兆円弱なので比較すると介護給付費総額がどれだけ大きいかわかります。介護制度の利用が促進されていくと財源にそのまま反映されるので、「自治体の運営が難しくなる」という声も多く出ています。市町村や厚生労働省は給付費増大を抑えることが課題となっています。

2025年問題

1947年~1949年いわいる第一次ベビーブーム生まれの人々が2025年に75歳以上となります。一般的に前期高齢者より後期高齢者が要介護状態に陥るリスクが高くなり受診、受療率も当然高くなります。そのため介護保険や医療保険の財源が一層逼迫すると考えられていいます。介護保険創設以降に要介護状態に陥るリスクが増加してきましたが2015年から2025年の10年間はさらに急速に増加します。介護保険・医療制度の見直しから消費税などの税制や財政制度の改革が急務になっているわけです。

いままでの介護保険の制度改正

2006年の制度改正

  • 要支援者の給付での「介護予防」
  • 地域支援事業(介護予防事業・包括的支援事業)の創設
  • 施設入所時と短期入所時の食費・居住費用を全額利用者負担

「当時の要支援・要介護1の伸びが著しく、給付費の増加を招いている」「介護サービスを受けても要介護状態の改善結びつかない」などの指摘より予防重視型システムの確立の旗印をした制度改正が行われた。これは要介護状態に陥る高齢者を予防し保険給付の効率化(抑制)することを制度化したものです。

2009年の制度改正

  • 法令遵守責任者の配置
  • 事業の休止・廃止の事前届出制の導入
  • 休止・廃止時のサービス確保の義務化など

民間企業の介護サービスにおいて法令遵守違反が社会問題になりました。そのため2009年に事業者へ「業務管理体制の整備」の制度改正が行われました。介護サービスを運営するすべての法人に「法令遵守責任者」を配置する事を義務づけ事業者運営のコンプライアンスを徹底しました。

2012年の制度改正

  • 医療と介護の連携強化
  • 介護職員等における喀痰の吸引等が可能に
  • 高齢者の住まいの設備
  • 認知症対策の推進

定期型巡回・随時対応型訪問介護や小規模多機能型居宅介護などの地域密着サービスに訪問介護機能がついた複合型サービスが創設されました。医療と介護の連携強化といえます。またサービス付高齢者向け住宅など高齢者に適した住宅の登録制度が創設されました。

介護保険の使い方

身近な相談窓口と利用の流れ

介護の事で困ったことや悩みがある時は早めに相談にいく事が大切です。介護保険の相談窓口は実は身近な所にたくさんあるんですよ!
どこに相談したら分らない時はまずは保険者である市町村の役所か役場に相談しましょう。介護保険や高齢者福祉の担当課が相談に応じてくれます。予約などの必要はなくすぐに相談に乗ってくれます。

地域包括センター
所長村は高齢者の相談・調整機関を設置しています。地域包括センターと呼ばれる機関は全国におよそ7000か所あります。市町村が直接運営しているものと社会福祉法人等が委託されているものがありますが、業務内容に違いはありません。介護保険のみならず高齢者の相談窓口、要介護認定の申請代行も行います。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員といった高齢者の専門職が配置されています。

要介護認定の流れ

①要介護認定の申請
介護給付や予防給付を利用する際に必ず必要になってくるのが要介護認定の申請です。申請は市町村で受け付けており、家族や居宅介護支援事業者等の代行も可能です。市町村で用意している「要介護認定申請書」に記入のうえ、介護保険の被保険者証を添えて提出します。被保険者証は第一号被保険者が65歳を迎えた時点で市区町村から送付されます。また第2号被保険者は要介護認定等を受けると交付されます。

②認定調査
申請が受理されると市町村から認定調査の連絡がきます。自宅や入院先で本人への面接や調査が行われます。調査員は市町村職員、市町村から委託を受けた居宅介護支援事業者、ケアマネジャーなど様々で法令で決められた項目・方法で行われます。

③1次判定
要介護申請の1次審査では基本調査85項目の結果をもとに一定の研究データに基づき審査が行われます。「介護にかかる手間(介護の必要度)」を数値化したものが要介護認定等基準時間でそれを統計的な手法で区分されたものが要介護状態区分です。5つの分野ごとに算出し1次判定結果を導くことになります。

④2次判定
要介護認定では1次判定結果をもとに介護認定審査会で2次判定が行われます。2次判定は最終的な審査・判定となります。介護審査会は保険・医療・福祉の学職経験者5名1組として設置され組数は市町村の高齢者の人口に応じて決められます。2次判定は1次判定結果に主治医の意見書と認定調査の特記事項を加味して行われます。介護の手間、原則となる期間の短縮・延長の必要性を検討し、全体的な状況から認定有効期間の設定を行います。

要介護認定の結果

要介護認定の結果は市町村が原則30日以内に行います。30日を超える場合はあらかじめ文章で通知されます。認定の場合は申請を行った本人に文章で通知され、被保険者証に要介護状態区分・有効期間・介護認定審査会などの意見が記載されています。認定には申請の日にさかのぼって有効期限が設定されています。不認定の場合は不認定の旨が本人に通知されるとともに、被保険者証が返送されます。結果に不服がある場合は、不服申し立てを都道府県に設置されている介護保険審査会に審査請求を処分があった事を知った日の翌日から起算して60日以内であれば行うことができます。

利用者の負担はいくら?

介護保険の給付は市町村が介護保険特別会計から負担します。利用者の自己負担は1割または2割です。ですが利用者の負担にはいくつかの例外があります。

ケアマネージメント
居宅介護支援事業・地域包括センターでのケアマネージメント費用については全額が保険給付で支払われます。利用者の自己負担はありません。

訪問・通所系サービス
それぞれの事業者が運営規定で定め訪問や通所時の送迎を受けた場合の交通費、通所時の食費、おむつ代、日常生活費等は全額利用者が負担します。また区分支給限度基準の範囲を超えて介護サービスを利用する場合も保険給付の対象外となり限度額を超えた部分の費用は全額を利用者が負担します。

短期入所サービス・介護保険施設
短期入所サービス・介護保険施設ではそのものの費用は介護報酬に定められ自己負担は1割または2割です。ですが短期入所では自己負担額が施設ごとに1日単位の費用が定められています。食費は材料費だけでなく光熱費、人件費、厨房経費が同様に定められています。ただし、居住費(滞在費)と食費については一定水準の低所得に対しては負担軽減策(特定入所者介護サービス費)が設けられます。

認知症グループホーム・特定施設
介護サービスの費用は1割または2割負担ですが、住まい(家賃)と食事の費用は介護保険の報酬とは無関係で別途負担が必要です。特定施設となっている有料老人ホーム等では入居時の一時金・保証金などが必要になる場合もあります。軽費老人ホーム・養護老人ホームの場合は負担軽減策があります。ですが認知症グループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅では相応の費用負担ができなければ利用は困難です。

医療制度改革と介護保険

2014年4月の診療報酬改正などをはじめ介護保険法改正は医療・介護関連制度の一体的な見直しの一つとして行われています。

医療保険の改正でどのように変わるの?

医療計画(医療に関する行政計画)は医療違法に基づいて都道府県が策定します。医療保険の改正で「地域医療構想の策定」が義務づけられました。
「地域医療構想の策定」は2014年から2025年に医療需要と医療体制の整備計画を明示するものです。とりわけ注目を集めているのが病床の機能別の必要量を示すことが求められた点です。

急性期病棟(重症患者の対応)
回復期病棟(重症を脱した後のリハビリテーション)
慢性期病棟(積極的な治療を必要としない医学的管理)

改正前は①~③のように分けられますが細やかな整備計画は示されていませんでした。対応可能な傷病の程度、種類、医療費などの違いを解消すべく医療医療構想の策定が必要となったのです。近年、病床を減らす事や早期退院を促す傾向にあり今後、介護老人ホーム、特別養護老人ホームの整備計画に波及し在宅医療、介護サービスも新たな整備計画が必要となってくるでしょう。

マイナンバー制度との関係

平成28年1月からマイナンバーの利用が始まりました。介護保険や医療保険に関して保険料徴収における手続きや、保険給付をはじめ要介護認定の申請、居宅サービス計画作成届出、被保険者証の交付・再交付申請など様々な申請書に個人番号(マイナンバー)を記載する欄が追加されます。マイナンバー制度は介護保険や医療保険の決定事項や所得情報などの個人情報と連動させ迅速に把握することができます。また不正防止にも活用されます。

介護と在宅医療

診療報酬改定で「地域包括支援料」が新設されました。診療所または病床200床未満の病院で一定の慢性疾患を有する患者に対して「主治医機能」を果たす場合に月一回算定できます。また診療所には一定の条件下での「地域包括診療加算」(一日ごとの算定可)も設けられました。

利用できる介護サービス

居宅サービス

訪問介護
ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問して行う介護サービスです。排泄・食事・更衣・入浴などの身体介護、掃除、洗濯、調理等の生活援助、通院のための乗車、降車の介助などがあります。法令で定められた条件のもと、一定の研修をうけた介護員が医療的ケアを行う事業所も徐々に増えています。

訪問看護
看護師等が訪問して病状の観察、診療の補助、療養上の世話、機能訓練などを行います。病院・診療所が訪問看護を実地するものと独立した形態である訪問介護ステーションと2種類があります。訪問ステーションは看護職員が一人以上常勤で必要となる事に加え理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が配置される事もあります。利用者については病院・診療所が実施する場合はその医療機関で受診している患者に限定されますが訪問看護ステーションの場合には主治医は限定されません

訪問リハビリテーション
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問し基本動作・家事等の手段的日常生活動作などに関する機能訓練を行います。この利用についても医師の指示が必要です。利用には原則、事業者である医療機関で受診している患者である必要があります。

居宅療養管理指導
医師や歯科医師などが訪問し生活上の助言や服薬、栄養、口腔ケアなどの指導を行うことで在宅生活を支援するものです。原則として利用者は通院等が困難である場合に限られます。

介護保険施設

日常生活の世話や介護、機能訓練や健康観といった介護保険サービスを利用できる公的な施設です。特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護療養型医療施設(療養病床)の3種類があります。要介護認定を受けた人が対象で入所時にかかる費用はありません。月額費用は居住費や食費を加えても割安になっています。

地域密着サービス

認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など少人数で共同生活を送るサービス。要支援2の方も予防給付で利用可能。介護が必要な状態でも市町村指定の事業者が柔軟に対応して、住み慣れた地域で暮らしていけるように提供するサービスです。

地域支援事業

地域支援事業は保険給付とは別に市町村事業として行われるものです。各市町村で開始時期・実施内容が異なります。「地域支援事業」に対しては、介護保険財政の3%を上限に、介護保険制度から費用がまかなわれています。

介護予防事業
要介護認定で「非該当」になった人が対象。訪問型サービス・通商型サービス・生活支援サービス・介護予防ケアマネジメントが行われます。

包括的支援事業
地域包括支援センターが行う相談業務等に加え在宅医療・介護連帯推進事業・認知症施策推進事業などが実施されます。

任意事業
市町村独自の工夫に基づく事業。介護給付費の適正化を図るためのケアプランのチェック等。