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遺言書が見つかった時の対応と相続手続き

亡くなった家族の遺品の中から遺言書が発見された場合、重要なのは「まず家庭裁判所に持っていくまでは開封しない」ということを覚えておくことです。遺言書を開封した後は、遺言執行者の指定やその他の重要事項を確認し、他の相続人と協力して故人の遺志を実現するための手続きを進めます。相続に関する手続きは多岐にわたり、それぞれに期限が設定されています。このため、全体の流れを理解しておくことは、期限内に適切な対応をするために非常に重要です。遺言書を発見した場合に取るべき行動について、以下の通り詳しく説明します。

1. 家族への連絡

遺言書を見つけたら、まず家族に知らせることが重要です。今後の手続きや相続人のスケジュールに影響を与える可能性があるためです。

2. 遺言書の種類の確認

遺言書が封筒に入っている場合、未開封の状態でその種類を見極めます。表題や署名、封筒に記載されている注意書きなどを確認し、以下のいずれかの形式であるかを判断します。

  • 自筆証書遺言:表題は「遺言書」、署名は被相続人のものが1つ。内容は全文手書き。
  • 秘密証書遺言:表題は「遺言書」、署名は公証人を含む4名分。内容は手書きまたはワープロで作成。
  • 公正証書遺言:表題に「遺言公正証書」や公証役場の名が含まれる。内容は公証人が作成。

3. 家庭裁判所への提出

自筆証書遺言または秘密証書遺言であれば、未開封のまま被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。これは「遺言書の検認」という手続きで、開封して現状を証明するために行います。提出には以下が必要です。

  • 検認申立書
  • 被相続人の全戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用郵便切手(郵送の場合)

検認時には、申立人と他の相続人全員が開封に立ち会う必要がありますが、一般的には専門家が代理人として立ち会います。

4. 公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合は、検認の必要はありません。遺言の内容が公的に証明されており、原本が公証役場で保管されているため、直接遺言執行に進んでも問題ありません。

遺言書を勝手に開封してしまったら?

遺言書を勝手に開封してしまったら?

見つけた遺言書を焦って開封してしまわないよう、十分注意が必要です。特に、検認が必要な遺言書を勝手に開封すると、以下のような問題が生じる可能性があります。

1. 自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、書き方によって効力を持ちますが、開封したからといって即座に無効になるわけではありません。ただし、他の共同相続人が無断開封を問題視する場合は異なります。例えば、同居家族が無断で開封し、その後「書き換えられたのでは」「死後偽造されたのでは」と疑われるリスクがあります。これらの疑念が晴れない場合、遺言無効確認訴訟に発展し、結果的に遺言の効力が失われる可能性があるのです。

2. 遺言書を改ざんすると相続できなくなる

遺言書を偽造、変造、改ざんする行為は、相続人としての資格を失う原因になります(民法第891条5号)。このような理由で遺言が無効になった場合、遺産分割協議に参加できず、相続財産を受け取る機会も失います。

3. 秘密証書遺言の場合

秘密証書遺言の効力は、封印と開封が正しい手順で行われることに依存します。そのため、原則として検認を経ずに開封してしまった時点で無効になります。ただし、自筆証書遺言の形式で作成されている場合は例外的に効力があるとされています(民法第971条)。それでも、偽造や改ざんの疑いは避けられないため、慎重な対応が求められます。

遺言書を発見した場合は、開封せず適切な手続きを踏むことが重要です。無断で開封することによって生じるリスクを避けるためにも、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。

遺言執行者って?

遺言執行者って?

遺言書に「遺言執行者」が指定されている場合、相続手続きはその人物が中心となって進められます。遺言執行者は、相続財産の管理や遺言の実行に必要な一切の行為を行う権利と義務を有します(民法第1012条)。具体的には、以下のような活動を行います。

  • 全相続人へ遺言内容の通知
  • 相続財産の目録交付
  • 遺言事項の実行(例えば、遺産の名義変更)
  • 任務完了後の報告

特定の行為に関しては、遺言執行者がいないと実行できません。例えば、子の認知や相続人の廃除、一般社団法人の設立などです。遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に選任申立をする必要があります。

遺言執行者の指定

遺言では、遺言執行者を指名することも、特定の人に指定を委託することも可能です。委託された場合は、指定を行い、それを他の相続人に通知する必要があります(民法第1006条第2項)。遺言執行者としては、未成年者や破産手続中の人は除外され、健康状態や年齢も考慮する必要があります。実務上、弁護士や司法書士などの専門家が指定されることが多いです。

遺言執行者の辞退

特定の相続人が遺言執行者に指定されることは一般的ですが、自信がなければ辞退することも可能です。辞退する場合は、速やかに家庭裁判所へ選任申立を行う必要があります。

遺言執行者の責任

遺言執行者は、相続人が行うべき手続きを代行する重要な役割を担いますが、その職務は簡単ではありません。ミスがあると善管注意義務違反として損害賠償責任を負うこともあるため、慎重な対応が求められます。

遺言執行者の任務と役割

遺言執行者は、相続財産の管理や遺言の実行に必要な全ての行為を行う権利と義務を有します(民法第1012条)。この役割には以下のようなことが含まれます:

  • 全相続人への遺言内容通知
  • 相続財産の目録交付
  • 遺言事項の実行(例:遺産の名義変更)
  • 任務完了後の報告

また、遺言執行者がいないと実現できない特定の事項もあります。これには子の認知や相続人の廃除、一般社団法人の設立などが含まれます。

遺言執行者の指定と対応

遺言で遺言執行者を指定しない場合、「遺言者の子○○に指定を委託する」といった文言で委託することも可能です。委託された場合は、遅滞なく指定を済ませ、他の相続人に通知する必要があります(民法第1006条第2項)。

遺言執行者の候補としては、未成年者や破産手続中の人は法律で除外されます(民法第1009条)。健康や年齢に不安がある人も適していません。通常、弁護士や司法書士など専門家が適任とされます。

遺言執行者の辞退

特定の相続人が遺言執行者に指定されることは多いですが、自信がなければ辞退することも可能です。辞退する場合は、速やかに家庭裁判所への選任申立を行う必要があります。

遺言執行者の職務は簡単ではなく、ミスがあると善管注意義務違反として損害賠償責任を負うことになるため、慎重な対応が求められます。

遺産の名義変更の流れ

遺産の名義変更の流れ

遺言書にはさまざまな財産の所有者変更に関する指示が記載されていることがあります。例えば、預貯金に関しては、遺言書に従って該当する銀行へ行き、必要書類を提出し名義変更を行います。一方、不動産に関しては、登記所に相続登記の申請を行うことになります。遺言書に記載された指示は、単に財産の分割だけでなく、特定の相続人に特定の財産を与える「遺贈」なども含まれることがあります。これらの指示に基づいて行う手続きは、共同相続人全員の協力が必要です。つまり、遺言書に基づく手続きを進めるには、該当する財産ごとに適切な機関へ行き、そこでの手続きに従って進める必要があります。

預貯金の名義変更

遺言に従って預貯金の名義変更を行う場合、銀行に事前に問い合わせた後、必要書類を提出します。通常、以下の書類が必要です。

  • 遺言書本体
  • 払戻先口座の情報が記入された申請書
  • 家裁交付の検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)
  • 死亡を証明する書類(除籍謄本等)

ただし、金融機関によっては、相続関係を証明するために被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本など追加書類を要求する場合もあります。

不動産の名義変更(相続登記)

相続不動産の名義変更には、相続登記申請が必要です。主に以下の書類が求められます。

  • 登記申請書(登記原因や不動産の表示等を記入)
  • 登記原因証明情報(遺言書、検認済証明書、戸籍謄本等)
  • 住民票(新所有者の納税地特定のため)
  • 固定資産評価証明書(登録免許税計算のため)

その他の遺産分割手続き

遺言執行には、債権回収、不法占有者の排除、受遺者への財産引き渡し、抵当権抹消登記、土地建物の売却手続きなど、さまざまな法律手続きが含まれることがあります。これらの手続きは専門知識が必要であり、場合によっては弁護士や司法書士の協力が求められます。

遺言による信託

遺言で信託が指定されている場合、受託者は信託財産を分別管理し、信託の目的に沿って行動する必要があります。これには、信託口座の開設や信託登記、株式名簿の書換えなど、通常の相続手続きとは異なる特殊なプロセスが含まれます。信託に関する手続きは複雑であり、専門家のアドバイスが必要です。

見つけた遺言書を無断で開封してしまうと、過料の対象となるだけでなく、故人の生前の希望に従って遺産を受け取ることが困難になる可能性があります。特に公正証書遺言でない場合は、家族に発見したことを伝えた上で、封を切らずに家庭裁判所での「検認」手続きを行うことが必要です。

遺産の名義変更やその他の遺言執行に関する手続きは、時に複雑になりがちです。遺言執行者として士業(弁護士や司法書士など)が指名されている場合は、比較的スムーズに進むことが多いですが、自分たちで行う場合は、必ずしも銀行や法務局への申請だけで済むわけではありません。遺産を売却して分割するための買主探しや、債権回収、信託契約に関する手続きなど、さまざまな手間が伴うことがあります。

もし遺言執行に関して不安がある場合は、専門家に相談し、法律や取引に関する適切なアドバイスを受けることが重要です。専門家の支援を受けることで、遺言に基づく手続きを適切に進めることができます。